
本会事業活動の4本柱のひとつである「企業倫理道徳の向上と推進」に向けて、基本的な考え方や課題を学習し、 具体的に実践できるよう実際の導入例を提供する企業倫理セミナーを東京で開催しました。専門家2名による 講義と実例発表を加えての充実したセミナーに、出席者は真剣に耳を傾けました。多発する企業の不祥事を背景に、 企業倫理や経営者の危機管理能力が問われていることから、本会では、継続的な取組みとして、東京を皮切りに 今後全国主要都市での開催を予定しています。
高講師
高講師は、講義冒頭、モラロジー研究所と麗澤大学の創立者である学祖廣池千九郎が「大勢に惑わされるな、真理に心を注げ」
と遺した言葉を紹介し、80年代のバブル前に企業経営の姿勢に対して「株や不動産などのマネーゲームに興じてはならない。
経営の基本を忘れ去る者は必ず競争力を失う」と警鐘を鳴らしたことがあったものの、残念ながらバブル崩壊後10年を経ても
なお厳しい現実を迎えていると振り返りました。「厳しい状況だからこそ、企業倫理の問題を考えて欲しい」と述べ、講義の内容を、
(1)司法判断がどう変わってきているのか、(2)真面目に倫理に取り組む企業が報われる社会的な仕組みを作り、市場で評価
されることが重要、(3)実際にどう取り組んでいけば良いのか、の3点を中心に講義を進めました。
近年の相次ぐ企業の不祥事には共通するものがあり、「企業に対して、世の中がかつてないほど、誠実に仕事をやっているのか
注目するようになってきた」「ウチは真面目ですという言葉だけではなく、企業が仕組みとして、その言葉を担保するものを
持っているかが問われるようになった」と、社会的な関心が高まっていることを指摘しながら、高講師が取り組んでいる日本版社会的
責任投資基準(SRI)の作成や、法令遵守に誠実な企業の株式を選んで投資信託を運用する企業等を紹介しました。
個別の企業が具体的に何から着手すべきかについては、「まずは、社是社訓をしっかり守ること、遂行する責任者を決めること、
実際に運用されているのかチェックすること、仕組みを継続的に見直していくこと」であるとわかりやすく解説し、順法意識を持つ社員が
増えて企業風土や文化が変わっていくことが大切であると強調しました。
最後に、「トップのリーダーシップと意識が会社を変えることができ、倫理の実践には公正な第3者の視点も必要」と講義を締めくくりました。
出見世講師

出見世講師は、権利意識の増大、価値観の多様化、異文化や国際化をめぐって社会が変化していること、また、企業規模の増大、
創業者理念を共有する困難さ、経済的価値の単純評価などによる企業の変化について具体例を挙げながら、社会と企業の変化に否応無く
対応しなければならない中、企業倫理の仕組みを取り入れていく必要性を強調しました。企業経営者は、絶えず利害関係者との間に
生じる諸問題へ対応することが求められており、良好な関係を維持することは、「信頼」や「評判」を獲得することにつながる、
と述べました。
(社)中小企業研究センターが出見世講師に昨年依頼した調査では、中小企業においては、顧客、従業員、地域社会との関係をより重視する
アンケート結果が得られていると報告、企業の社会的課題事項を利害関係者、価値理念、課題事項別に整理した資料をもとに、利害関係者が
企業に求める価値理念を尊重することが重要であると解説しました。
大企業を中心に企業倫理が制度化されていく中で、企業内倫理教育が重要な役割を果たすことは理解されていても、中小企業は実際に
どう取り組んでいったら良いかという質問が多く寄せられることから、出見世講師は、「行動や決定に関する倫理度チェック」を紹介しました。
(1)法令や会社の行動憲章に反していないか、(2)すべての利害関係者にとって公正なものか、(3)自分自身のプライドを損なうものではないか、
さらに、企業倫理教育の留意点として、「抽象的な話ではなく、自社の過去の経験など具体的な事例を用いる」、「個別業務に関連した課題に
ついて身近な問題として取り上げる」など、企業の現場を意識した解説を加えました。
企業の倫理は、業務の効率と密接に関ってくる部分があり「倫理的である企業は、効率的である」と意識することが着眼点として大切であり、
中小企業が倫理に取り組む姿勢について提案しました。
最後に、「倫理道徳というと堅苦しさを連想させてしまいがちだが、誠実さ(Integrity)とは、決してバカ正直を意味するものではありません。
倫理的であるということは、すべきことは出来ることを前提とすることから、中小企業の経営者に対して申し上げたいのは、出来ることが
すべきことであり、出来ることから始めましょう」と呼びかけ、講義を締めくくりました。

講師との質疑応答の後、(株)ジュピターコーポレーション倫理綱領について、同社の田中邦男・常務取締役より発表がありました。同社は宇宙 航空機関連の機材部品材料を主に輸入し、製造・修理部門をもつ「メーカー商社」であり、防衛庁等との取引もあることから、同社藤村薫社長の 強力なリーダーシップのもとに昨年の9月に倫理綱領を作成しました。 実例紹介では、創業者精神を汲んだ現社長の言葉をはじめとし、倫理法令遵守の基本方針、目的と基本姿勢、倫理委員の役割と責任、具体的行動 規範について、倫理綱領完成までのプロセスを含めて実際の現場で実践されているエピソードを交えながらわかりやすい説明があり、セミナー 参加者からの質問に対しても的確に解説を加え、大変有意義なセミナーを締めくくることができました。