一般社団法人日本道経会

始めること、続けること、繋ぐこと。

嶋崎 万太郎
  • 福井互敬塾 支部長
  • 双申株式会社 代表取締役

皆様、はじめまして。福井互敬塾の支部長、双申株式会社代表の嶋崎万太郎と申します。

この文章は今、インドネシアへ向かう飛行機の中で執筆しています。私の17歳になる息子を連れ、そして日本道経会・互敬塾の仲間と共に、現地の大学生との交流や職業訓練校の視察が目的です。

私がやりたいことは、子どもや若者に「働くことは楽しい」というメッセージを体現し、伝えていくことです。「楽しい」という言葉には、特に「興味深い」の意味が込められており、子どもや若者が生涯探求し続けられるテーマに出会えるかどうか、その手助けや機会提供をしていきたいと思っています。

こう私が思うのは、先代の双申社長である父への感謝が根底にあります。私は会社を継ぐ2代目です。それと同時に、事業は私自身で作った初代でもあります。仕事や顧客はゼロの状態で、休眠していた双申という会社を使わせてもらい、事業を始めたのは24歳の時でした。

当時は「アイデアを武器に、クライアントの良い所を表現し相手のために尽くす」という考えでデザイン事業を始めました。しかし、技術も人脈もない、どこの誰だかよくわからない若造はなかなか相手にしてもらえず、最初の2年間はがむしゃらでどん底の日々でした。

このとても苦しい時期に、父の勧めで新潟のT社長の所に行きました。そしてそこには、私の目指すべき姿がはっきりとありました。観光という業態だったのですが、アイデアでお客様の興味を引き、とにかく楽しませ、しっかりともてなし、商品はそのついでというスタンス。そのT社長は、とにかくユニークで明るく人が集まる。そして自社だけ儲けるのではなく、地元の志ある方同士を繋げていく姿を、一緒にいた短い時間を通して見せてくれました。「ああ、自分は将来こんなふうに仕事をしたい」と、体を通してそう強く感じました。

冒頭に、私は子どもや若者に「働くことは楽しい」というメッセージを体現し、伝えていきたいと言いました。これは、私自身が新潟のT社長の姿を見てどん底でそうなりたいと思ったことがきっかけでもあります。そして私が訪れた時には順風満帆に見えたT社長も、過去には事業が行き詰まりどん底だったそうです。その時に私の父が行った、経営の考え方セミナーが心の支えとなり、とても感謝しているとおっしゃっていました。偶然のような、必然のような不思議なご縁を感じます。

私は今、自分で始めた「デザイン事業」を行いつつ、父が思いを込めて開発した「経営のボードゲーム」を譲り受け、教育事業として展開を図っています。このゲームには、物の考え方・見方が詰まっており、経営者に役立つものです。本当に大切なことを自分で見つけ、気付けるようにゲーム化してあり、例えば人間力と経営の両立という理想を具体的に体験する事もできます。

この経営ゲームを使う教育事業では、大学で学生に伝える場を4年ほど続けています。先日、私の授業で「働くことは楽しいと思える人はいますか?」と聞いたところ、なんと8割強の人たちはそう思えないという反応でした。学生になぜか聞いてみると「仕事はお金を稼ぐ場所だから」という答えが返ってきました。私は「もちろん、仕事ではやるべきことは必要です。ですが、その先にあなた自身を大切にできるやりがいのある仕事もありますよ。それは、楽しみながらできる仕事です。あるという風に考えてみて探してはいかがでしょう?」というやりとりをさせてもらいました。

何がきっかけで、仕事を楽しみ「自分を信じ続けることが芽生える」かはわかりません。最適なタイミングもあるでしょうし、辛いことも体験しなくてはいけない気がします。ですが、憧れる人物像であったり、やりたいと思える気持ちが育つ「体験の機会」を作り続けることが私の使命であるとそう思います。

今回の旅路で、息子を同行させたのも、世界を広く見てほしいと思う気持ちと、日本道経会・互敬塾の仲間で楽しく仕事している姿があることを示したかったのです。それは本人がそう感じてもらえることが大事だと思います。そしてこの視察の主催で、この思いを分かち合える日本道経会道経会愛知支部の加藤滋樹さんに「息子さんもご一緒にどうぞ」とお声をかけていただいたことに大変感謝しております。

今回の取り組みは日本の若者だけでなく、国を超えた世界の若者の成長のきっかけにもなるかもしれません。インドネシアの学生にもその輪が広がり、繋がっていくことを願っております。