一般社団法人日本道経会

第2の創業と人づくり

大豆生田 光雄
  • 東京支部会員
  • 有限会社まみうだ石材 代表取締役

■ はじめに

有限会社まみうだ石材・代表取締役の大豆生田(おおまみうだ)光雄と申します。弊社は1892年(明治25年)に創業し、私は六代目を務めております。創業当初は土木工事と石材業の二本柱でしたが、時代の変遷とともに石材業(墓石の建立など)へと軸足を移してまいりました。

二代目・大豆生田弥三郎の時代には、数多くの公共工事を手掛ける傍ら、私財を投じて道路の拡張工事を行うなど、地域社会の発展に尽力いたしました。その甲斐あって、今でも地域の方から「この道路ができたのは、まみうださんのお陰だよ」とお声がけいただくことがございます。

モラロジーを学ぶ前の私は、そうしたお言葉をいただいても実感が湧きませんでしたが、今ではこれこそが先祖の積み重ねた「余徳」であると強く感じております。また、こうしてモラロジーに出会えたこと自体も、先祖からの導きであると深く感謝しております。

 

■ 余徳の力

二代目・弥三郎が地域貢献や職人の独立支援(人づくり)に励んだ「余徳」は、四代目・幸悦の時代に大きな意味を持ちました。幸悦は戦地から帰還後、別人のように仕事への情熱を失ってしまいました。生活は困窮し、仕入れた石材の代金すら支払えない状態に陥ったのです。朝から仕事も手に付かず酒に溺れる日々では、経営の立て直しなど到底望めません。

窮地を見ていた同業者が、あえて当店の目の前に店を構えるという出来事もありました。通常であれば廃業や倒産を免れない状況でしたが、不思議なことに、当店は何とか持ちこたえることができたのです。今でも当時の話になると、周囲の方々は一様に「不思議だよね」と口をそろえます。私はこれこそが、目には見えない「先祖の余徳の力」であったと確信しております。

 

■ 人口減少の影響

現在、日本は人口減少により、あらゆるビジネス市場が縮小しています。我々の業界も例外ではありません。近隣の動向を見ても、パチンコ店が駐車場の一角を洗車場に改装したり、設備工事会社が「便利屋」として新たな看板を掲げたりと、本業の落ち込みを多角化によって補おうとする動きが顕著です。

 

■ 第2の創業(新たな挑戦)

こうした時代の変化を見据え、弊社では15年前より同業者向けのWebマーケティングコンサルティング事業を開始し、現在では売上の大きな柱へと成長いたしました。さらに近年では、長年の念願であったオーダースーツ事業にも参入し、プライベートサロンを開設いたしました。

新規事業を興す際、私が大切にしているのは、TSUTAYA創業者・増田宗昭氏の「外を見て答えを探すのではなく、目を閉じて、自分は何をしたいのか、どうなれば幸せなのかという内面から答えを見出したい」という言葉です。Webマーケティングもオーダースーツ事業も、まさに私自身の内面から湧き出た情熱によるものでした。

経営学者ピーター・ドラッカーが「変化か死か(Change or Die)」と説いたように、中小企業にとって「現状維持は衰退」を意味します。石材業という枠に捉われず、固定観念を打破しながら、変化を恐れず挑戦し続けて参りたいと考えております。

 

■ 人づくり(モラロジーで学んだこと)

「経営者としての使命とは物をつくり、物を売って金を儲けるということではなく、人間をつくることである」

廣池博士が門人に語られたこの言葉に触れたとき、私は雷に打たれたような衝撃を受けました。それ以来、「人づくり」を生涯の目標として掲げています。そして、その「人」とは他人のことだけではなく、まずは自分自身を磨き上げることであると考えております。

 

■ 出社しない社員

かつて、入社後すぐに無断欠勤を繰り返す社員がいました。1週間も連絡が取れなければ、通常は会社との縁が切れてもおかしくありません。しかし、モラロジーを学んでいた私は「自分にできる限りのことをしよう」と考え、仕事終わりに彼の自宅を訪ねました。

対応してくださったお母様は、「息子が会社に行っていないとは……申し訳ありません」と、何度も深々と頭を下げられました。私は「いえ、至らないのは私の方です」とお伝えし、その社員の素晴らしい長所を二つ挙げ、「彼にはこんなに良いところがあるのです」と心からお伝えしました。お母様は涙を流しながら「ありがとうございます」と何度も繰り返していらっしゃいました。

その後も家庭訪問を続ける中で、彼は再び出社するようになりました。今では独立し、一人親方として立派に活躍しています。

 

■ 師を持つことの重要性

モラロジーを学び始めた頃、先輩から「師を持ちなさい」とのご指導をいただきました。いろいろな講座やセミナーに参加し、師を見つけようと努力していく中で、当時の代表世話人さんからある方をご紹介いただきました。その方こそが、私の「師」となりました。

以来、数十年にわたりご指導をいただき、モラロジアンとしての歩みを支えていただきました。この出会いがなければ、モラロジー事務所の代表世話人や生涯学習講師を務めることも、モラロジーの本質に触れることもできなかったでしょう。これから真剣にモラロジーを学ぼうとする若い世代の方々には、ぜひ良き師を持ち、その導きのもとで豊かな人生を歩んでいただきたいと願っております。