一般社団法人日本道経会

一人ひとりの健康から社会の健康を創る

高梨 勇人
  • 日本道経会 島根支部会員
  • 島根互敬塾 支部長
  • さんびるグループ健康福祉事業統括
  • 株式会社SKSS(さんびる健康スポーツ支援センター) 代表取締役社長

株式会社SKSSはご縁の国島根県にある、いわゆる健康づくり・スポーツの会社で、お子様のキッズスクールからシニア世代へ向けたフレイル予防教室まで幅広く展開しています。また、公共施設の管理を民間事業者が担う「指定管理者制度」では、体育施設・スポーツクラブの運営なども手がけ、社内の健康運動指導士や管理栄養士、歯科衛生士などの専門職が様々な切り口で地域の健康づくりをサポートさせていただいている組織です。

私がさんびるグループに入社したのは2008年の春でした。当時、体育系の大学を卒業したのち、そのまま博多で働いておりましたが、さんびるグループが健康福祉事業を立ち上げるタイミングで弊グループ代表の田中正彦さん(さんびるホールディングス株式会社 代表取締役、現日本道経会理事・島根支部代表幹事)とご縁をいただき入社しました。入社のきっかけは私の母親が息子を地元に帰らせたいという思いで、勝手に会社に申し込んだという今となっては笑い話のような経緯でしたが…

採用試験の面接にて、会って30秒で「君にうちの健康福祉事業を任せる!」というトップからの熱いメッセージをいただいたのはいいのですが、入社後の私は何も仕事がなく、自治体の関係部署や様々な機関へPRを兼ねた営業にまわる日々でした。

そんな中、地方で急激に進む高齢化、そこから連鎖する医療費・介護保険に関わる費用の増加を目の当たりにして、いつまでも高齢者の方に元気で過ごしていただくことは官民一体となって取り組むべき課題だと感じ、住み慣れた地域にいつでも誰でも行くことができる通いの場の創出を自治体へ提案して、現在の「からだ元気塾」が生まれました。

参加者1、2名というところからスタートした教室も、現在では松江市内全域35の公民館で毎週開催しており、年間延べ4万名を超える方にご参加いただいています。内容は運動・栄養・口腔の3本柱を弊社の専門職が指導する教室で、最近では買い物支援など生活に密接したサービスにより付加価値を高めながら開催中です。小さな点から広がっていった事業でしたが、出雲市や鳥取市など近隣の自治体からもご依頼をいただき、少しずつ事業の成長を感じております。

事業立ち上げ時と同様に苦労したのがコロナ禍でした。私たちのような健康指導やスポーツ施設は人を集めて事業を展開するビジネスモデルであったため、売上はコロナ前の9割減という部門もありました。スタッフにも休業をしてもらっている中、先行きの見通せない状況に悩んでばかりいた私は、当時の社長であった田中にマイナスの相談をすることもありました。

そんな時にも「誰も辞めさせない。社員の給料は全額補償。パワーを充電してまた頑張るぞ。」という強く迷いのない言葉に私は親から叱ってもらったような有難さと自身の未熟さを痛感したのを覚えています。おかげさまでコロナ禍の経験は私たちを強くしてくれ、過去には想像できなかった今に繋がっています。

健康づくりという事業をしながら、私はモラロジーの考えと似た部分が多いと常々感じています。例えば言葉一つをとっても、健康というのはその人自身のことですが、むしろご家族を中心とした周りの方が願っているのではないかということです。幼い子どもの健康は親の方が願っていますし、高齢の両親の健康はその子どもが願っている。つまり相手を思う心の表れこそが健康づくりではないかと。自分が元気でいることが周りの幸せに繋がる。そんなことを考え、私が代表になった際に弊社のキャッチフレーズを「一人ひとりの健康から社会の健康を創る」と定めました。

加えて、私が道経一体経営を学びはじめて変わったことは判断基準の変化です。事業の立ち上げから携わってきた身だからこそ、今まではどうしても売り上げなど結果を求めすぎる傾向がありました。お客様を大事にする気持ちは強かったものの、なにか経営判断をする際に本当の意味での自分よし(会社だけでなく、社員にとっても本当にいい決断か)の部分が足りていなかったように感じています。

私たちさんびるグループが目指す【いい会社】の定義は、子どもや家族に働かせたい会社です。家族だから優しく、そして厳しくもなることができる。家族だから全て自分事にできる。そんな組織を目指して今後も道経一体経営を学び、その決定は本当に「三方よし」になっているのかを自問自答しながら進んでいきたいと考えています。

そして、こんな私にたくさんの期待と愛情を込めて育てていただいた第二の父親でもあるグループ代表の田中への恩返しと、いつの時でも支えてくれる社員のために私の人生を使っていこうと思っています。事業の採算が取れない時期にも「地域に喜んでいただける事業をしなさい。」と続けさせていただいた私の目標は、地域から必要とされる会社です。

いつの日か私も胸を張ってバトンを渡すことができるよう、日々精進してまいります。今後とも日本道経会、そして互敬塾の皆様どうぞよろしくお願いいたします。