徳とは他人の心に喜びを与えることなり
- 福岡支部 会員
- 株式会社イチヤマ 代表取締役
弊社は長崎県の離島・壱岐の島でスーパーマーケットを経営しています。祖母の代に市山青果という屋号でスタートし、父の代でスーパーマーケットに業態変換、令和3年4月に、古い店舗を取り壊し、新しい店舗を新築し、第2創業を5年前にスタートさせました。
最高道徳の格言「天命に従いて曲に人事を尽くす」の気持ちで、新店舗の開発に当たりましたが、最初から躓きました。私の心に驕りや慢心があったのかもしれません。4月22日にオープンしましたが、その準備に来てもらった福岡からの業者様からコロナ感染者が出てしまいました。当時変異株のデルタ株の流行り始めた時期です。4月27日に私と店長がコロナ陰性でしたが、濃厚接触者となり、2週間の隔離が決定しました。5月1日には、業者が使用した壱岐の飲食店からコロナ感染者が発生。新店舗は旧店舗の2倍の広さの店舗でしたが、お客様の数は激減。売上計画の半分ほどの売上にしかなりませんでした。
事務所にはお客様から「お前のところが福岡から業者を呼んだから、壱岐でコロナが広まったやないか。どうしてくれるんや!」などのクレームの電話が殺到し、5月の売上は設備投資したにもかかわらず、昨年対比の91%。壱岐のために作ったつもりの新店舗が、逆にコロナ感染者を増やし、壱岐へ悪影響を及ぼしてしまいました。残念ですが、結果が全てです。経営者の私が悪かったのだと自己反省し、従業員数名ごとに集まってもらい経緯を説明、謝罪し、これから信頼を取り戻すために力を貸して欲しいとお願いしました。
創業者の祖母や父母の余徳のお陰でしょうか、令和3年7月ぐらいからどうにか売上、客数ともに昨年を上回る数字になってきました。九州スーパーマーケットグループの加盟社や本部の人たちの協力、支援も大変ありがたかったです。まだまだ信頼を取り戻したとは思ってませんが、徐々に良い方向へ向かっていっている感覚になりました。そしてようやく、最高月商を更新していく数字になってまいりました。
そんな安心は長く続きません。令和5年5月22日、私は弊社の駐車場で倒れました。くも膜下出血でした。意識のない私は、ドクターヘリに乗せてもらい、福岡県の和白病院へ搬送されました。妻がヘリに同乗してくれたそうです。私が目を覚ますと、和白病院のICUでした。自分に何が起こっているのか分からない私は、動揺したのを覚えています。すぐにリハビリを開始できた私は、そんなに大したことなかったと思い、少し病気を甘く見ていました。そんな私に主治医の先生から、お叱りを受けました。「ドクターヘリに乗せるのに、呼吸が落ち着かないから乗せられずに、大変だったんですよ。くも膜下出血という病気は、3分の1の人が命を落とし、3分の1の人が後遺症が残り、3分の1の人しか生き残れない大変な病気なんですよ。」と。
私の父は平成22年8月18日に脳幹出血で命を落としました。64歳でした。今生きていれば80歳です。そんな父が私を生き残れる3分の1の中に入れてくれたのかもしれません。
令和5年6月13日に退院することができました。入院期間は3週間でした。後遺症は全くなく、本当に3分の1に入ることができたようです。生きていることに感謝し、毎日を噛み締めるように生きています。
私が倒れている間、幹部社員、従業員が一丸となって、会社を守ってくれました。創業祭のイベントも私がいなくてもしっかり成し遂げ、売上を落とすことなく、私に安心を与えてくれました。
「徳づくりの経営とは、人づくりの経営ですよ」と道経一体経営講座で教わりました。私は倒れるまで、自分が自分がと我武者羅に働いてきました。しっかり任せて自分が責任を取れば、従業員はやってくれます。そのことを自分の病気を通して学びました。今では、従業員の成長のために、手を離して、目を離さず、向き合っていくよう努力しています。
「徳とは他人の心に喜びを与えることなり」(徳づくりの経営 P26)
第二創業にあたり、自分への戒めとして、そして従業員への目標としてこの言葉を伝えています。このような心づかいをできる社員が増えれば、会社は勝手によくなっていくのではないでしょうか。自分が自分がではなく、他人の心に喜びを与えられる人材を育てていきたいと思います。
そうなるために、ずっと一人で参加していた、2月と7月の道経一体経営講座に最近は社員と二人で参加するようにしています。遠く長崎県の壱岐の島から2名で柏の本部受講することは、費用も時間も大変ですが、それだけ素晴らしい講座です。次回の7月の道経一体経営講座でも2名で参加し、より多くの仲間とこの素晴らしい学びを共有できたら嬉しく思います。人づくりは自分つくりからと言われています。そして、全国から道経一体、三方よしの経営を目指す、多くの仲間が受講しています。皆様の会社でも、一人でも多くの従業員の方が、他人の心に喜びを与えられる人材に育つように学び続けていきましょう。