事業承継とファミリービジネス
- 日本道経会 長崎支部
- 有限会社 東洋印刷所
弊社は来年75周年の節目を迎えます。
長崎県長崎市で祖父が活版印刷業として創業し、父が2代目、現在専務の兄と常務の私が来年の10月に3代目としてバトンを受け継ぐ予定です。
よくファミリービジネスは「親との意見が合わない」とか「衝突ばかりだった」などという話を聞きますが、私の場合は、言い争ったことなどなく、言われるがままにやってきました。
私自身、幼少の時から反抗期が無く、父や兄に頼りすぎていたり、自分の意見を言わなかったり、自己主張が苦手でしたが、祖父や両親のやってきた障害者雇用や地域貢献、組合活動、社員やお客様に対する心遣いなどを見てきて、尊敬の念と父のように人望があり、頼られる経営者になりたいと思っております。
ファミリービジネスは経営等に関する迅速な意思決定が出来たり、家族間の信頼関係や柔軟性があるのが強みでもありますが、逆に公私混同してしまったり、外部からの意見が入りにくい恐れがあります。
いい会社、永続する会社にするためにも対立を恐れず意見を出し合い、会社の成長、信頼の維持を第一に考え、公私の区別をつけることが大切だと思います。
私は高校卒業後、後を継ぐとは思っておりませんでしたが、父から勧められた唯一東京にある印刷の専門学校へ行き印刷の知識や経営学などを勉強させてもらいました。
兄も先に専門学校に行っておりましたが、父の体調が悪いという事で、1年で自社に戻り、私も2年後に会社を手伝う様になりました。
数年は印刷の後加工をやっていましたが、印刷機を新調するという事で、工場長として就任。
兄は制作担当から営業をするようになり、事業承継の話も出るようになったころ、私は現場を仕切り、兄が営業なのだから経営もやってくれると甘い考えでいる私に、経理をやっている母から2人で経営していくようになるのだから営業をして数字を勉強しなさいと言われ、渋々受け入れました。
人見知りで無口な私が、どうやって営業をしていけばいいのかわからずにいると、父から全国組織の互敬塾という会があるから、そこで世の中のことを勉強してきてはどうか、という事で入塾したのが20代後半のころです。
入会して少し経った頃、名刺交換や人前で話も出来なかった私に、日本道経会長崎支部のある先輩が例会委員会に入って例会の司会をやってみないかと言われ、絶対に出来ないと思っていましたが、大変可愛がってもらっている先輩なのでやってみることにしました。そこで、たくさん恥をかきました。笑われました。怒られましたが、他の先輩方にも声をかけて頂き、他にもいろいろな役を経験させて頂いたこの経験があったからこそ今の私があるのだと実感しております。
その大好きな先輩には感謝の気持ちでいっぱいです。いま互敬塾長崎支部長として今年度で6年目を務めさせて頂いております。
この経験とご縁、諸先輩方や長崎支部や全国の仲間は私の財産です。いろいろな方から頂いたご恩を送れるように、これからも繋がりを大切にして、微力ではありますが盛り上げて行きたいですし、勉強させて頂きます。
3代目として、日本道経会で学んだこと、道経一体、三方よし経営、人づくりなどを取り入れた経営を行っていこうと思いますが、ファミリービジネスは私だけの考えではうまくいかないと思います。
予定では兄が社長に就任するので、兄ともっと考えを共有し、どういう方向性が弊社にとっていいことなのか、どういう会社にしたいのか、家族間でもコミュニケーションをとり、お互いを尊重しながら永続企業を目指していきます。
先代から携わってきた印刷業界は、斜陽産業と言われ、デジタル化などで紙の印刷物は年々減少しており、仕事の取り合いで価格競争が激化している状況です。しかし、印刷という分野はまだまだ幅広く出来る事は沢山あると考えております。
不易流行という言葉がありますが、変えてはいけない「お客様の思いをかたち(印)にするという姿勢と祖父や父が築いてきた伝統を守ること」そして時代の変化に対応し、積極的に自社を変えていくことが永続に繋がると考えております。
紙だけの印刷に拘らず、付加価値の高い商品やサービスを提供し、まずは失敗を恐れず挑戦する事を実践します。