事業承継 経営幹部として、父として
- 岐阜互敬塾 支部長
- 株式会社サンポーギフ 取締役
株式会社サンポーギフ取締役の三宅善人と申します。弊社は飲食フランチャイズを中心に、岐阜県、愛知県一宮市周辺、静岡県浜松市で店舗展開する創業五十三年目の会社です。弊社の目的は、社員の「品性向上」を目指し、「また会いたい」と思われる人づくりを実践していくことです。私の役割は、社長を支えこの方針を推進すること、そして未来を創る新規事業を創造することです。また、現在互敬塾岐阜支部の支部長をしております。互敬塾を通じて全国各地に志を同じくする『一生の友』が出来たことをうれしく思っています。
家族は妻と二人の娘。両親も健在という恵まれた環境の中、今回私は『事業承継』というテーマを選びました。私は経営幹部ではありますが、オーナー経営者ではありません。そんな私が語れる継承とは何か。それは「経営幹部としての気づき」と「長男としての家の承継」、この二つの側面からの物語です。
承継とは
私にとって承継とは、単に資産を譲り受けることではありません。過去の歴史を正しく認識し、そこに流れる「想い」や「志」を次代へ繋ぐことです。入社時、会社は創業二十五年目でした。今、さらに四半世紀が過ぎて感じるのは「入社前の会社の歴史」を知る大切さです。創業者が何を願い、最初の一歩を踏み出したのか。その原点を知らずして未来は語れません。弊社では全社員に配布する手帳に、理念や創業時の話を記し、共通言語としています。「道経一体」の学びでも、承継には優先順位があると教えられています。
- 精神 ― 創業者の想い、理念と徳
- 人財 ― 精神を受け継ぎ、体現する人づくり
- 資産 ― 正しく使うための品性があってこそ活きるもの
中村会長、そして中村社長から繰り返し教えられてきたことですが、真に腹に落ちるまでには時間がかかりました。三月十六日の「恩人祭(創業者の命日)」、モラロジーの学び。それら点であった行事が、ある時一本の線で繋がりました。事業承継とは、世代交代の時に急に発生するものではない。普段から「何のために事業を行うのか」を説き続ける、その継続こそが承継の正体なのだと気づいたのです。
家庭における「歴史」の承継
この気づきは、私の視野を広げました。規模は違えど「家」も同じです。事業は行わずとも、祖先の精神、人財育成、資産の承継は家庭でも実践できます。祖父から父、私、そして娘たちへ。三宅家の歴史と精神を繋ぐことが、私の使命であると気づきました。
三宅家では毎年十一月に「祖先祭」を行っています。以前は形式的な認識でしたが、父が作成した「家系図」を手にした時、認識は一変しました。曾祖父らの歩み、刻まれた命日の数々。祖先の苦労を思うと胸が熱くなりました。私たちが今あるのは、この系譜の一人ひとりが命を繋いでくれたからです。
私の祖父と父は、かつて死に直面する危機を奇跡的に乗り越えました。二人は決まって言います。「自分は運が良かった」「祖先の徳のお陰だ」と。目に見えない大きな何かに守られている実感。この感謝の念こそが、三宅家の精神の根幹です。
背中で語り、共に歩む
この想いを娘たちに伝えるため、私は二つのことを実践しています。
一つ目は「親孝行の実践」です。言葉より、親を大切にする姿を見せることが何よりの教育です。記念日には感謝を形にします。結婚四十五周年の際には、兄弟で両親を温泉旅行に招待しました。介護等で自分の時間が少なかった母の、あの溢れるような笑顔は忘れられません。二年後の「金婚式」にも、特別な時間を贈る計画を練っています。
二つ目は「共に学ぶ時間」です。 子供が幼い頃はテーマパークを選びましたが、今は楽しさだけでなく、知見を広げる、知るための「経験」を重視しています。数年前から旅行先を「日本の歴史を学べる場所」や「後世に繋いでいくべき事績」に変えました。最初は不満げだった娘たちも、現地で重みに触れると真剣な眼差しに変わりました。二十歳前後になっても家族旅行についてきてくれるのは、同じ景色を見て、共に心動かす時間を共有できているからだと感謝しています。
私の決意
私は今、五十三年の歴史を刻む「サンポーギフ」というと歴史ある会社の取締役という重責と、祖先から受け継いで伝えていく「三宅家」という二つの壁に挑んでいます。
私の決意。それは、「預かったバトンを、より輝かせて次へ渡す」ことです。取締役として中村社長の描く未来を誰より深く理解し、泥にまみれてでも形にする。100年後の社員たちが「この会社で良かった」と誇れる、徳に満ちた組織を築きます。
父として、夫として。娘たちが壁にぶつかった時、「お父さんの背中はこうだった」「三宅家にはこの教えがある」と、彼女たちの暗闇を照らす灯台となれるよう、私はこれからも親を敬い、学び続ける姿を見せ続けます。
承継とは、過去への感謝であり、未来への責任です。 限られた人生の中で、先人・先輩の徳と志を、一滴もこぼさず次なる器へと注ぎ込むことに全力を尽くしていきます。本日、この様な機会をいただき、自らの歩みを見つめ直せたことに、心より感謝申し上げます。 ありがとうございました。