一般社団法人日本道経会

『私的な恩から「大恩」への気づき』

工藤 大受
  • 株式会社クドー 代表取締役
  • 東京互敬塾 塾生

株式会社クドーは64年前、祖父が徳島から上京し、創業した会社です。その後、父が二代目として会社を継ぎ、私は三代目となります。私が入社したのは、ちょうど祖父が他界したタイミングでした。娘が生まれた12年前、代表取締役に就任いたしました。現在の従業員数は10名ほどで、母、妻、弟、そして私という、ほぼ家族経営をしております。主な事業は、東京都内の小中学校へ家庭科教材や学校備品、消耗品などを販売することです。日々の営業活動の中で、毎日小学校を訪問し子供たちの元気な声からパワーをもらいながら働いております。

日本道経会では、廣池千九郎博士が提唱された「道徳と経済は一体である」という「道経一体思想」を学んでおります。これまでの経営の歩みの中で、私が「道徳と経済」について身をもって感じたこと、気づきを綴らせていただきます。

まずは、「道徳」についての気づきです。私の人生は常に廣池千九郎博士が創始されたモラロジーの深いご縁の中にありました。

私の母は岐阜県土岐市から上京し、世田谷区にあるモラロジー企業に就職しました。そこでモラロジーがご縁となって父と巡り合い、結婚し、私が生まれました。祖父母も同様にモラロジーと関わっておりました。私自身もモラロジーの創立者廣池博士の建学の精神を教育の基本理念とする麗澤高校を卒業し、妻とも麗澤の卒業生同士というご縁で結ばれました。最初に就職した先も、モラロジー関係の職場でした。

このように、今の自分があるのは、モラロジーのつながりから頂いた数々のご縁であり、お世話になった方々のおかげに他なりません。そのため、私は「この有難いご縁への恩返しとして、モラロジーや互敬塾の活動に貢献しなければならない」と考えていました。

しかし、学びを深めるうちに、その考えはまだ「私的な恩」の枠にとどまっていたのではないかと気づかされたのです。もちろん、身近な人や特定の組織に対する私的な恩に感謝し、報いることも大変尊く大切なことです。しかし、モラロジーでは、「大恩」に対して報恩することを教えています。

私たちは皆、大自然から空気や水、そして命を与えられ、目に見えない先祖の余徳によって「生かされている」存在です。これこそが「大恩」です。今までの間違いを認識すると同時に、曾祖父の代から脈々と繋いでもらった廣池博士の教え、そして今こうして生かされていることへの「大恩」に心から感謝し、見返りを求めない報恩の行いを重ねていくこと。つまり最高道徳の実行、具体的には人心の開発救済をさせて頂くことによって人間の「品性向上」ができるのだと勉強いたしました。

道経一体思想では、企業の栄枯盛衰は経営者や従業員の品性によって大きく左右されると考えられています。『道経一体経営原論』には、「(経営者の)最も重要な仕事は自己の品性向上である」と説かれています。大自然や社会に生かされているという謙虚な気持ちを忘れずに最高道徳を実行し品性向上の努力をしていきたいと思います。

次に、「道徳と経済」のうち、「経済」についての気づきです。数年前、当社の売上の大部分を占めていた主要な仕入先(東証二部上場の大手企業)から、方針転換を理由に、代理店契約を一方的に解消されました。それまで主なお得意先としていた地域の学校に対して、企画力のある商品を供給できなくなり、売上は減少しました。現在は、新たな仕入先の開拓や、新しい商品・サービスの導入を模索し、奮闘していますが、市場環境も相まって厳しい状況にあるのは事実です。

しかし、この危機にあっても弊社が持ちこたえ、次の一手を打てているのは、10年以上前から続けている「経済の学び」があったからです。

当時、私は互敬塾の先輩たちが多く参加されているある勉強会に魅力を感じていました。先輩を頼って無理を言って仲間に入れていただき、現在も学びを継続しています。主要仕入先から契約を解消される前、毎年黒字でした。その勉強会の先生は日頃から私たちにこう口を酸っぱくされて、このように教えてくれました。「節税してはいけない。感謝して適正に納税しなさい」、「税金でお金が持っていかれることに不満を持つのではなく、いかに会社にお金を残し、貯めるかに目を向けなさい」少しずつではありますが、お金がたまりバランスシートも改善されました。

その結果、大手との契約解消という危機に直面した今でも、次の展開へ投資するための体力が残されています。先日も、銀行の担当者から「きれいなバランスシートですね」という言葉をいただきました。もし、勉強会で「正しい原理原則」を学んでいなければ、現在倒産の危機に瀕していたかもしれません。「道徳」を実践するためには、まず企業が健全に生き残るという「経済」の確立が必要不可欠であることを、身をもって痛感いたしました。

現在、弊社が顧客としている子どもの数は減少して市場は縮小傾向にあります。しかし一方で、子ども一人当たりに掛けられる教育費や、国・自治体による教育現場への予算(税金)の投入は、むしろ手厚くなっていくと思われます。

廣池博士は大正十一年に、次のような言葉を残されています。「大勢には、善きものと悪しきものあり。大勢に逆行、または順応するものは滅ぶ。順応しつつ真理を守るもの残る。」(原文ママ)

変化の激しい今日において、弊社もこの言葉通り、変化に適応しつつも常に真理を守っていきたいと思います。真理とは神の心である最高道徳、言い換えると「人づくり」で人と社会を豊かにするという日本道経会のビジョン実現です。小さな力ですが、ビジョンの実現の一助を弊社も担っていきたいと思います。

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