事業承継からの人づくり
- 日本道経会 三重支部
- 株式会社 サーブ
今年、サーブは創業25周年を迎えました。私の父が1999年7月8日に創業した会社です。よく「父の背中を見て育った」と言われますが、創業当時、私は岐阜県の麗澤瑞浪高校で寮生活をしており、家庭や会社での父の奮闘を直接見て学ぶ機会は少なかったように思います。
2009年、26歳のときに私はサーブに入社しました。当時の私は若さゆえに、何ができるのかもわからないまま、ただ会社に飛び込んだ状態でした。さらに社長である父と私は親子でありながらも、仕事に対する考え方や価値観の違いから、次第に溝が生まれていきました。今振り返ると、父は私に新しいチャレンジを含め多くの経験をさせてくれたと思います。仕事に対する考え方や価値観の違いは、私の未熟さに起因するものであり、仕事に対する基本的な姿勢が欠けていたと感じています。
2014年、31歳のとき、それは突然訪れました。準備が全くできていない状態で、私は社長に就任することになったのです。決算報告の際、税理士の先生から「そろそろ世代交代を考える時期ではないでしょうか」という助言を受け、父はそれを即座に実行に移したのです。父の実行力には驚かされました。
ここからの1年間は、さらに父との関係が悪化していきました。社長としての責任感から「やるべきことがある」と思いつつも、これまでのやり方を変えようとする私の姿勢が、父との対立を深めたのです。そんな状況の中、私は自ら理念カードを作り、それを父に見せ「これで経営していこう」と伝えました。そのとき初めて、私は経営者として父に認めてもらえたように感じ、嬉しかったことを覚えています。
その後、弟もサーブに入社し、次の課題は兄弟経営へと移っていきました。
弟が入社して5年ほど経った頃、会長である父との間で子会社を設立する話が持ち上がりました。私は弟がその子会社の社長を務めるのが最適だと考えていましたが、彼の最初の返答は「ノー」でした。兄弟で経営する以上、同じ視点を持つことが必要だと感じていた私は、新規事業を先に別会社で実現することにしました。それが、ITを中心としたコンサルティング会社「株式会社エントランス」です。
その一年後、弟から「子会社の話を進めたい」という申し出があり、彼を社長として「株式会社フォワードフレイム」を設立しました。「よし!これで同じ視点を持ってグループ会社として共に盛り立てていこう」と意気込みましたが、なかなかうまくいきませんでした。この時私は、自分が社長になったときと同じようなプロセスを、今度は弟に対して繰り返していました。社長であるがゆえに「こう考えて欲しい」という期待を、無意識に押し付けてしまっていたのです。
それではダメだと思いながらも、この葛藤が限界に達した頃、田中塾の松江合宿に参加する機会がありました。さんびるの田中正彦さんから「とにかく兄弟でしっかり話せ」と熱心な指導を受け、帰宅後すぐに弟と向き合います。なかなか自分の思いを兄に発信しない弟が自ら発言するまで待つという忍耐の時間が続きましたが、結果、経営の方向性をすり合わせることができました。この環境を築くにあたって、役員である岩瀬の存在も大きな力となりました。
現在、エントランスやフォワードフレイムを含むサーブグループでは、企業内での人づくりに力を入れています。私自身の成長だけでなく、社員一人ひとりが成長できるよう、目標設定を通じて支援しています。かつては中小企業の社長として、すべてを抱え込む必要があると思っていましたが、今では役員を中心に協力し合いながら、挑戦できる環境を整備しています。
この経験から、私は「巻き込む力」の重要性を痛感しました。自分がやりたいと思っても、仲間がいなければ何も実現できません。しかし、仲間が増えることで大きな波が生まれ、その波が変化への挑戦を可能にします。その中心にはやはり社長自身がいます。これからも、自分の品性(魅力)を磨きながら、組織全体で成長していきたいと思います。
私たちは、「自らが開拓者となり、挑戦の中でパートナー(お客様)と社会貢献をする」という理念を掲げています。挑戦とは新しい体験を意味し、その体験を通じて人は成長していきます。自分自身が成長することで、パートナーに貢献し、結果的に社会に貢献する。これがサーブが考える「三方よし」の実践です。
25年という節目を迎えた今、私は事業承継を通じて学んだことを次世代に伝え、人材育成に力を注いでいきたいと考えています。父から受け継いだ企業精神を基盤に、新たな時代に対応した企業へと成長させることが、私たちの使命であり、挑戦です。サーブグループはこれからも人づくりを通じて、社会に貢献していくことを目指していきます。