人づくりとは、自律心を育てること
- 日本道経会 岐阜支部
- 株式会社サンポーコーポレーション
弊社は先々代が永定商店を創業し、岐阜県羽島市にある長谷虎紡績㈱様と協力関係で、㈱ダスキン様のレンタル雑巾の製造を担っていたアパレル会社でした。その縁で会長が1970年の第1回ミスタードーナツフランチャイズ説明会に参加したことをきっかけに、前身である㈱岐阜フーズを起業し、岐阜市内でミスタードーナツをスタートさせました。今では岐阜県内、浜松市にお店を構え、他に宅配クック123といったフランチャイズビジネス(FC)を他6業態、全25店舗を運営して創業51年を迎えます。なお永定商店は廃業しております。
ミスタードーナツはずっと安定して売れているとイメージされているかと思いますが、実は順調な時ばかりではありませんでした。それは2009年頃からは新商品を投入しても売れない時期となり、5日間の月2回の100円セールに頼って売上を確保する経営となっていました。薄利多売のセールは定価販売時の倍の売上を得ることが出来ましたが、これをくり返すとお客様はセール価格に慣れ、定価販売に価値を感じなくなり、セールをする度とセールしなくても前年対比を下回る売上の年が2008年頃から2015年まで続き厳しい経営状態になりました。その状況を少しでも打開したく店舗改装に投資しましたが効果はなく厳しい運営が続き、ミスドを最大23店舗運営しましたが17店舗にまで減らすことになりました。
そんな中、2016年に私は社長に就任しました。その年に本部政策が変わり100円セールを止め、商品開発に力を入れることが決まりました。
100円セールは10年以上続けてきた文化ですので、多くのFCオーナーは反対でしたが、私はミスドの未来を考えたら、今の売上を減らす痛みを負ってでも復活を信じました。結果、売上の落ち込みが加速し、その痛みは3期連続赤字となり社員へのボーナスも大きく減らすことにもなりました。社長になる以前から私がトップとして出来ることは何かを深く考え続け、道経一体で学ぶ人づくりを会長とは違う自分の目線で行動し現状を改善することと決めました。
会長が道徳教育に力を入れてくれたお陰と、社員の気持ちには赤字の危機感があり反対されることなくいろんな改善を行うことが出来ました。先ずはアメーバ経営にある「売上最大、経費最小、時間最短」の経費最小、時間最短の徹底の教育を優先事項としました。
売上を上げれば儲かるという、どんぶり勘定の風土でしたので、それを変えたかったのです。
経費を切り詰めることはもちろんの事、毎日の売上に対して使った労働時間が見合っているのか、生産性を数値で細かく報告する教育等を全店長たちに毎月行いました。段々と経費に対して管理意識が身に着いた時、2018年から新商品がヒットするようになり、ようやく利益が出るようになりました。
このことは松浦静山の「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」の言葉に当てはまると思います。負けは、急にはやってきません。負け癖の思考や習慣を継続し続けると悪いスパイラルに落ちていきますが、勝ちは日頃の努力の上に自分が予想もしてない時にチャンスが訪れます。
こうして売上が上がりはじめた頃、2020年のコロナ禍となり思い出すのも辛い厳しい売上となりましたが、有難いことに約半年間の我慢で済み、その後徐々に売上が上がり昨年は過去最大の売上と利益となりました。
そういった成功体験ができたので社長業をしながら2024年の夏まで、店長たち全員の教育を自ら全事業、全会議に出席し続けました。
なぜ今は教育を辞めたのか。それは店長たちの部下へのパワハラが私に毎月報告されるようになったからです。もちろん、何度もアンガーマネジメントに関することを教え指導しましたが止まりません。何が問題なのかわからないまま、2024年の夏に日本道経会会員企業である、京都の㈱新経営サービスの田須美会長に呼ばれ、内観研修をもう一度受けるよう勧められ、自分を見つめ直すことにしました。
そこで気が付いたことは、以前の赤字からの成功体験が自分を驕らせ「俺が」「俺が」の「我」を出して、店長の上司である幹部を信用せず自分が前に出て、現場で起きる問題を全部受け止めていたことが、心の余裕を失い、幹部や社員へ自分でいらだつ気持ちを育てていたと気付いたのです。その気持ちが風土に影響していたのです。
そこでリーダーとして大切な愛情を持って皆に接すると決め、自ら教育するのは目の届く幹部だけとし権限委譲をしました。そのことで幹部、店長たちに起きたことは、教えてきたことをベースに、会議の在り方を自ら考え変えていくことが、始まりました。私が幹部、店長たちの自主性を奪っていたことに気付かされ、不思議とパワハラ報告が無くなりました。廣池博士の言葉にある「誠意を尽くして干渉を行わず」です。信じることで細かい干渉はしないと決めれば、皆が自ら考え行動するということです。
この体験で思う事は道経一体の人づくりは、自分自身と部下の「自律心を育てる」ことだと思います。リーダーは自らを方向づける環境と権限を部下に与えれば、責任感が芽生え、判断や行動がぶれない自分がつくり出されるということです。リーダーとして、経営理念や価値観など体得し自分の自律新を育て常に発信することも大切ですが、それを軸に自分を律することの出来る風土を育て、リーダーじゃなくても出来る仕事は任せきり「社長ならこう考える」と判断できる自律した人を増やしていくことを課題に今後も今以上の強い組織に育てていきたいと考えています。