やさしくなりたい
- 日本道経会 京都支部会員
- 株式会社MOTHERS 代表取締役
経営者として創業から23年が経ち、私が最も強く感じていることは、「正しさ」よりも「やさしさ」が大切だということです。初めて事業を立ち上げた頃、私は正しさを追求し、効率や成果を最優先に考えていました。しかし、経験を重ねる中で、本当に強い人間とは何か、何が人を動かし、組織を成長させるのかについて深く考えるようになりました。
ある日の従業員との会話が心に残っています。その従業員は、あるミスを犯し、その結果として会社に損害を与えてしまいました。私の中には怒りと苛立ちがありましたが、その瞬間に彼の目に浮かんだ涙と、真摯な謝罪の言葉で、私はあることに気づきました。「正しさ」を盾に責めることは簡単ですが、「やさしさ」を持って許すことができる人間が本当に強いのだと。
やさしい人は、何より自分自身がたくさん傷ついてきた人で、他人の痛みや苦しみを理解し、共感することができます。やさしさは、自己犠牲の上に成り立っているのではなく、自らの経験と学びから生まれるものです。このようなやさしさは、ただの感傷や甘さとは異なり、深い理解と共感に基づいています。
それでも、「正しさ」は確かに重要ですし、ビジネスの世界では、正しい決断や行動が求められます。しかし、正しさだけを追求することで、人間関係が犠牲になり、組織の中での信頼や絆が失われることがあります。実際、歴史を見ても「正しさ」をめぐる争いは多く、戦争や紛争の原因となってきました。しかし、「やさしさ」から生まれる争いはありません。やさしさは、他人を受け入れ、理解し、共に成長する力を持っているのです。
私が経営者として学んだ最も重要な教訓は、ビジネスの成功は単なる数字や成果ではなく、人々の心にどれだけのやさしさを届けることができるかにかかっているということです。そんな私たちが誰かの幸せを願う時、その心にはやさしさが満ち溢れ、そのやさしさは、人と人との間に橋を架け、信頼を築き上げる力を持っているのです。
だからこそ、私は「やさしくなりたい」と願っています。経営者として、リーダーとして、そして一人の人間として、やさしさを持って人々と接し、従業員たちの成長を支えたいと思っています。やさしさは、ただ受け身でいることではなく、積極的に他人を理解し、共感し、支えることです。そのためには、まず自分自身がやさしさを持ち続けることが必要です。
やさしさは、簡単に手に入るものではありませんが、日々の努力と学び、そして自分自身と向き合うことで培われるものです。私たちは時に失敗し、傷つくこともありますが、その経験がやさしさを育む土壌となります。やさしさを持つことで、私たちはより良い社会を築き、ビジネスの世界でも、やさしさを持つリーダーが増えれば、組織はより強く、持続可能な成長を遂げることができるでしょう。そして、やさしさを持つことで、私たちは自己満足だけでなく、他人の幸福も追求することができるのです。やさしさは私たちの内なる強さであり、他人との絆を深める力です。やさしさを持ち続けることで、私たちはより良いステキな未来を築くことができると信じています。
「正しさ」よりも「やさしさ」を。
だから私はやさしくなりたい。